4.土地付き太陽光発電投資の低リスクは本当か!?
次にリスクについて考えてみます。「土地付き太陽光発電」は、日照さえ確保できれば発電して売電収入を得ることができますので、冒頭でもお話したようにマンション経営などのいわゆる“空室リスク”がありません。そのため世間一般では低リスクとみなされているかと思います。このことは太陽光発電投資の大きなメリットと言っていいと思いますし、投資リスクを下げる一因でもあります。ここでは、少し視点を変えて、別の観点からどのようなリスクが内在しているかについて調査・検討した結果をお伝えしたいと思います。
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4.1 想定されるリスク
表8に「土地付き太陽光発電投資」で想定される主なリスクをあげてみました。表8にあげた各項目のリスクの詳細は次のとおりです。
表8 土地付き太陽光発電投資で想定される主なリスク
(1)日照の不安定性
図3に東京における各年の日照時間の推移を示します。この日照時間の推移を見る限り、太陽からの日射量は、過去100年程度の期間において安定していますので、「土地付き太陽光発電」を購入してから向こう50年程度の期間に日射量が激減するリスクはほぼ無いと思います。
図3 東京における各年の日照時間(気象庁HPデータ(1891~2015年)をグラフ化)
(2)太陽光発電システムの経年劣化
(a) 太陽光発電モジュール(パネル)
3章でも述べましたが、太陽光発電モジュール(パネル)の出力性能は一般に経年劣化し、その劣化の割合は前年比で1~2%ともいわれています。このような出力性能の低下を十分に考慮した上で実質利回りや利益をあらかじめ予測しておくことが重要です。いいかえますと、将来どの程度の性能低下があるのかをあらかじめ見込んでおけば、性能劣化のリスクはある程度コントロールすることが可能です。加えて、かなり長期間に亘って太陽光発電モジュール(パネル)を使い続けることを予定されているのであれば、ある時期に交換費用が発生することも考慮しておく必要があります。
(b) パワーコンディショナー(パワコン)
これも3章で述べましたが、パワコンの寿命は一般に10~15年といわれております。太陽光発電モジュール(パネル)の性能劣化の場合と同様に、あらかじめパワコンの交換費用を見込んでおけば、ある程度のリスクコントロールは可能です。
(3)21年目以降の売電可否
これも3章で少しふれましたが、21年目以降も売電が可能になるかは、現状では、はっきりとした予測は難しいと思います。安全な投資を心がけるのであれば、21年目以降は発電しないと考えておくことが懸命かもしれません。
(4)21年目以降の売電価格の大幅な下落
21年目以降の売電可否と同様、21年目以降の売電価格がいくらになるのかを正確に予測することは困難です。安全な投資を心がけるのであれば、21年目以降は発電しないと考えておくことが懸命かもしれません。固定価格買取制度は、平成29年4月1日(施行)から見直されることがすでに決まっています。この制度改定に係る資源エネルギー庁の資料の抜粋を図4に示します。この図4をみておわかりのように、事業用太陽光発電の買取価格は、将来ますます引き下げられて最終的には産業用電力料金水準にまで落とす目標が掲げられています。
図4 事業用太陽光発電における価格目標イメージ
(経済産業省 資源エネルギー庁、平成28年6月)[3]
(経済産業省 資源エネルギー庁、平成28年6月)[3]
(5)電力事業者からの出力抑制要請
2章の「(1)固定価格買取制度」でも説明しましたが、大都市圏の電力供給を担う東京電力、関西電力及び中部電力では、いまのところ太陽光発電設備(50kW未満の低圧)で発電した電気は基本的にすべて買い取ってくれているようですが、電力事業者によっては、当該電力事業者が出力の抑制が必要と判断した場合には、売電のための電気の供給が抑制されることになっています。どの程度抑制されるかは電力事業者ごとの判断によります。図5に経済産業省 資源エネルギー庁が示している平成28年3月1日時点における出力制御ルールを示します。今後、太陽光発電施設が増大していけば、大都市圏の電力事業者であっても、出力制御のルールが適用される可能性は高いと思われます。出力抑制は売電収入に直結しますので、系統連系する電力事業者と売電契約を結ぶ際には、将来の出力抑制に係る条件をチェックしておくことは重要です。
図5 出力制御ルール(平成28年3月1日現在)[1]
(6)盗難
太陽光発電設備は、あまり人目につかない地域に設置する場合も多いので、盗難のリスクがあります。太陽光発電設備のメンテナンスを行っている業者から聞いた話では、売るとお金にかえられる銅線を引っこ抜かれるケースが多いそうです。設備の盗難により発電がストップしている状況をすぐに検知するためのモニタリングシステムの設置や、盗難を抑制するための防犯カメラの配備など、ある一定の対策を施すことによって盗難のリスクは低減できると思います。
(7)自然災害
日本で自然災害といえば、まっさきに地震を思い浮かべるのではないでしょうか?はたして太陽光発電設備は地震で損害を受けるものなのでしょうか?まだ記憶に新しい熊本地震では、一般住宅の屋根に設置された太陽光発電設備の被害はかなりみられましたが、報道(日経BPクリーンテック研究所、平成28年4月21日)によれば、地震の被災地域に存在していた太陽光発電所(九電工グループ)では、地震による不具合は特になかったようです。このことから地震に対するリスクはそれほど心配する必要はないかもしれません。
その他の自然災害ではどうでしょうか?これも記憶に新しい記録的豪雨による鬼怒川の洪水被害(平成27年9月)ですが、この洪水では太陽光発電設備は被害を受けました。そしてさらに、太陽光発電設備を設置するために周辺の自然堤防を掘削したことが洪水の原因になったのではないかという報道もありました。洪水による直接的被害も去ることながら、思わぬトラブルに巻き込まれないように造成工事内容についてもチェックしておいた方がよいかもしれません。その他、津波、竜巻、火山といった可能性としては小さいけれども実際に直撃したら確実に被害がでると思われる自然災害についても念のため発生リスクが高い地域は避けた方がよろしいかと思います。
その他の自然災害ではどうでしょうか?これも記憶に新しい記録的豪雨による鬼怒川の洪水被害(平成27年9月)ですが、この洪水では太陽光発電設備は被害を受けました。そしてさらに、太陽光発電設備を設置するために周辺の自然堤防を掘削したことが洪水の原因になったのではないかという報道もありました。洪水による直接的被害も去ることながら、思わぬトラブルに巻き込まれないように造成工事内容についてもチェックしておいた方がよいかもしれません。その他、津波、竜巻、火山といった可能性としては小さいけれども実際に直撃したら確実に被害がでると思われる自然災害についても念のため発生リスクが高い地域は避けた方がよろしいかと思います。
4.2 「土地付き太陽光発電投資の低リスクは本当か!?」のまとめ
想定される主なリスクをあげてみましたが、購入前に下調べをしておけば、大半のリスクは致命的なものではないといえるかと思います。ただし、21年目以降の売電可否と売電価格については、現時点でははっきりしない状況ですので、手堅い投資を考えるならば、太陽光発電投資の収益は20年目までと割り切った考え方をするのが懸命かもしれません。また、出力抑制についても、もし売電を抑制しなければならなくなった場合は投資として致命傷となるため、将来に亘って抑制されないことを確約できる物件以外は手を出さない方が懸命でしょう。
発電所への投資は20年目までと割り切った考え方をすれば、全体的にみれば、不動産投資の枠組みの中では比較的リスクは低いといっていいと思います。
発電所への投資は20年目までと割り切った考え方をすれば、全体的にみれば、不動産投資の枠組みの中では比較的リスクは低いといっていいと思います。
5.結論(土地付き太陽光発電投資は“あり”か“なし”か!?)
これまでに説明してきた調査・検討結果をまとめますと、「土地付き太陽光発電投資」の特徴としては下記があげられると思います。
以上の特徴を踏まえた結果、筆者としては「土地付き太陽光発電投資」は“あり”だと思います。ただし、4章のリスクのところで説明したように、固定価格買取制度は平成29年4月に見直される[3]ことが決定しており、将来的には売電価格が引き下げられることはほぼ確実な状況ですので、例えば5年後(本記事の執筆は平成28年7月です)には、“なし”になっているかもしれません。投資を実行するのであればなるべく早い方がよいでしょう。くれぐれも投資にはリスクがあることは忘れないでください。何事も最終的には自己責任ですので。
本記事を最後までご覧いただきありがとうございます。ここに書かれた情報が少しでもあなたの生活のお役に立てば幸いです。
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[参考情報]
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