仮設建築物・構造物の設計、強度計算、構造計算及び構造計算書や強度計算書(例:タワークレーン設置・解体のためのクレーン設置届やクレーン設置報告書における技術検討書等)の作成を請負います。コンクリート及び鋼製構造物のFEM解析(FEA)全般を請け負います。

土地付き太陽光発電

3.土地付き太陽光発電投資の高利回りは本当か!? (2/3)

3.3 土地付き太陽光発電投資の実質利回りはどれくらい?

最近まで実際に販売されていた物件の情報を参考にして、「土地付き太陽光発電投資」の実質利回りがどれくらいになるか試算してみました。当然ですが物件情報は各物件により異なりますが、ここで示したサンプルを見ていただくことによって、表面利回りと実質利回りの違いがどれくらいになりそうかのおおよその見当が掴めるかと思います。

3.3.1 1年~20年までの実質利回り

「土地付き太陽光発電」を購入した初年(1年)~20年までの実質利回りと表面利回りがどれくらい違うのかを見ていきます。なお、前述しましたように、平成28年度の10kW以上の太陽光発電の売電価格(24円+税)の保障期間は20年間です。

(1)物件の概要と表面利回り

表2に試計算の対象とした物件の概要と表面利回りを示します。表2の物件情報は、2000万円程度で実際に販売されていたある物件の情報とほぼ同じです。この物件の表面利回りは、表2に示すとおり、10.4%となりました(式(1)で計算)。ちなみに、ここで対象とした物件は「過積載」と呼ばれる物件です。「土地付き太陽光発電」では初期設備費等が抑えられることから“低圧”での連系が主流です。低圧で連系する太陽光発電設備の容量は50kW未満と定められています。その定義からすると太陽光発電モジュール(パネル)の搭載容量も50kW未満でよさそうですが、モジュールの容量を50kWとした場合では、曇りの日など太陽光発電パネルの性能を十分に発揮できないときには太陽光発電設備としての総発電量は50kWからかなり下回ることになります。そこで、常に50kW近くまで総発電量を引き上げることを目標として、太陽光発電モジュール(パネル)の容量をあらかじめ増やして搭載したものを「過積載」の物件と呼んでいます。売電の買取価格が、固定価格買取制度が開始された当初の40円(+税)から24円(+税)にまで引き下げられた現在(平成28年)では、この「過積載」のように売電による収入を引き上げるための工夫が施されています。

表2 対象物件の概要と表面利回り
対象物件の概要と表面利回り

(2)実質利回り(1~20年)

表3に「土地付き太陽光発電」を購入した初年(1年)~20年までの実質利回り(1年あたり実質利回り)を示します。「(a)初期費用」、「(b)ランニングコスト」及び「(c)推定年間売電収入」を考慮した実質利回りは6.1%となり、表面利回り10.4%の半分近くにまで落ち込んでいます。もちろんこの計算結果は、設定条件により異なりますが表面利回りと実質利回りは大きく異なる可能性が高いことについては、オーナーは認識しておくべきだと思います。以下に、この計算で考慮した各項目の詳細を説明します。

表3 実質利回り(1~20年)
実質利回り(1~20年)

(a) 初期費用

想定される主な初期費用です。

①販売価格
 今回対象とした物件の販売価格は“税抜価格”でしたので、税込価格(消費税8%)に直しています。

②系統連系費(参考価格)
 購入した太陽光発電設備を既存の送電網に接続するために電力事業者等へ支払う費用です。ここでは一般的な概算として「kW×1万円」としておりますが、販売業者等によって価格は異なります。

③土地の造成費(参考価格)
 太陽光発電設備は、初期費用を抑えるために価格が低い土地に設置されることがほとんどです。例えば、元々森林であった土地を利用する場合などでは、土地の造成が必要です。この造成費は土地の状態・条件により大きく異なります。

④防草シート(参考価格)
 防草シートを設置するかどうかはオーナーの判断によりますが、周辺の雑草が日光を遮り発電量が低下することを防ぐためには、防草シートの設置などの対策が必要です。業者に依頼せずに自分で設置する場合は、価格をもっと抑えられます。

⑤柵(参考価格)
 柵を設置するかどうかについてもオーナーの判断によりますが、太陽光発電設備の金属配線等の盗難や子供の立ち入りによる事故等を防ぐためには、周辺に柵を設置することが望ましいと思います。業者に依頼せずに自分で設置する場合は、価格をもっと抑えられます。

⑥土地の登記代(参考価格)
 土地の登記代です。価格は依頼する司法書士や仲介する販売業者によって異なります。

⑦発電量のモニタリングシステム(参考価格)
 モニタリングシステムを設置するかどうかについてもオーナーの判断によりますが、落雷による故障等によって発電システムが突然ストップしてしまった場合、その状況をいち早く知るためのアイテムとしてモニタリングシステムは必須だと思います。発電がストップされた状態が長期間続くと収益は大きく落ち込んで大きな損失を被るからです。また盗難を抑制するために、できれば防犯カメラもあわせて設置することが望ましいと思います。

(b) ランニングコスト(購入初年(1年)~20年)

購入初年(1年)~20年までの想定される主なランニングコストです。

①メンテナンス費(参考価格)
 定期点検、故障時の緊急復旧処置、除草及び除雪等のメンテナンス費です。依頼する業者によって価格は異なります。

②災害・盗難保険、システム保障(参考価格)
 自然災害や盗難に対する保険や、太陽光発電設備に対する保障のための費用です。なお、太陽光発電設備に対する保障は、10年や25年などのメーカ保障が付いている場合が多いと思いますので、この項目では主に保険に対する費用を想定しています。

③パワコン交換費(参考価格)
 パワコンの寿命は10~15年ぐらいといわれています。パワコンにも保障が付いている場合が多いと思います。ここではパワコンに10年の保障が付いていると仮定して、10年を迎える直前にパワコンを保障の範囲内で無償で交換した場合を想定して、パワコン交換費を0円としています。現実にはこんなにうまくいくとは限らないため、初年(1年)~20年の間でも、パワコン交換費をある程度想定しておいた方がよいかもしれません。

④現地出張費(参考価格)
 太陽光発電設備が故障したときなど、現地に行って様子を見る必要が年に何回かはあると思います。ここでは太陽光発電設備がオーナーの自宅の比較的近くの地域にあるものとして、2回/年の出張を想定しています。

⑤税金及び社会保険料(参考価格)
 以下に示す税金や社会保険料は、オーナーが法人なのか個人なのか、また減税優遇措置を受けているか、その他の所得がどの程度あるか等によって大きく異なります。ここでは少し乱暴ですが、便宜上、太陽光発電による売電に関して課せられる1年あたりの税金及び社会保険料を下記のように設定しました。

 {売電収入-ランニングコスト(税金、社会保険料を除く)}×5%

 税金及び社会保険料の負担額は、通常、少額ではないため、オーナーは事前に正確な金額を計算しておく必要があります。

1)主な税金
・所得税及び住民税
 所得税は売電の所得に対して課税されます。そして所得の増加に伴い住民税も増額されます。なお、売電による所得は、太陽光発電設備の減価償却費により大きく異なります。太陽光発電設備(システム)の耐用年数が9年(国税庁HP[2])であることも踏まえて所得がどの程度になりそうか検討しておくことは重要です。

・固定資産税
 前述しましたように、通常は土地の価値が低いところに太陽光発電設備を設置します。その場合、土地の固定資産税はほとんどかかりません。

2)社会保険料
 住民税と同様に、通常は所得の増加に伴い社会保険料も増額されます。

(c) 太陽光発電モジュールの経年劣化を考慮した推定年間売電収入(1~20年)

太陽光発電モジュールの経年劣化を考慮した年間売電収入の推定額です。

①推定年間発電量(1~20年の年平均)
 太陽光発電モジュール(パネル)の出力は経年劣化により前年比で1~2%程度低下するといわれています。見通しが甘いかもしれませんが、ここでは、毎年の出力が前年比1%ずつ低下すると仮定して年平均の出力を算定しています。仮に出力が前年比2%ずつ低下した場合、表3に示した売電収入はさらに落ち込みます。なお、販売業者によってはある程度の出力まで保障してくれる場合もあります。出力は売電収入に直結しますので、オーナーは、自分が購入する予定の太陽光発電モジュール(パネル)の出力低下率がどの程度になるか、また、出力保障が付いている場合はどのような条件であるかを確認することは非常に重要といえます。

②売電価格
 平成28年度の売電価格24円を採用しています。なお、消費税分は除いています。

③推定年間売電収入(1~20年の年平均)
 「①推定年間発電量(1~20年の年平均)」×「②売電価格」です。

(d) 実質利回り(1~20年における各年の利回り)

 1~20年における各年の実質利回りは下式で算定しています。

  (「(c)推定年間売電収入」-「(b)ランニングコスト(1~20年)」)/「(a)初期費用」 … (2)

(3)総収益(1~20年)

次に、上記で実質利回りを計算した物件を対象として、1~20年の総収益はどれくらいになるか試算した結果を表4に示します。表4の各金額は下記のとおり算定したものです。

①1~20年の総支出
 「表3(a)初期費用」+「表3(b)ランニングコスト(1~20年)」×20年分

②1~20年の総売電額
 「表3(c)推定年間売電収入」×20年分

③1~20年の総利益
 「②1~20年の総売電額」-「①1~20年の総支出」

④1~20年の毎月の利益
 「③1~20年の総利益」÷20年÷12ヶ月

 表4に示すとおり、今回対象とした物件の場合、20年経過した時点で推定総利益は約600万円と見込まれます。これを毎月の利益に換算すると約2.5万円/月の収益があることになります。初期費用として2675万円を投資して20年後に得られる収益として、これが高いか安いかは個々人の判断によると思いますが、当初の“表面利回り10%”から受ける印象と比較すると、収益は少なく感じるかもしれません。なお、ローンを活用して太陽光発電設備を購入した場合は、ここで示した収益に対してさらに落ち込むことになります。

表4 総収益(1~20年)
総収益(1~20年)

(本記事について)
みなさまの生活に役立つ情報を配信しています。インターネット上の一つの情報として気軽にご覧いただけたら幸いです。なお、本記事は可能な限り正確な情報に基づいた執筆に努めておりますが、万一、本記事の閲覧者が本記事の情報に基づいて損害を被ったとしても、ホームページ運営会社((株)DATエンジニアリングサービス)及び本記事の執筆者は一切の責任を負担しません。予めご了承願います。また、本記事はホームページ運営会社((株)DATエンジニアリングサービス)の事業とは一切関係ございません。






コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA